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ブラッド・グロサーマン日米関係を語る

 投稿者:Legacy of Ashesの管理人  投稿日:2014年 4月 9日(水)18時11分50秒
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  http://toyokeizai.net/articles/-/28599

ブラッド・グロサーマン
ジョセフ・ナイ(ハーバード大教授)主宰のCSISパシフィック・フォーラム事務局長、日米関係のスペシャリスト、ジャパン・タイムズ編集委員歴任、ジョージ・ワシントン大・法学士、ジョンズ・ホプキンス大・修士

昨年12月に実行した安倍首相の靖国参拝は、今なお国際社会の注目テーマとなっている。この靖国参拝は、今後の日米関係にどのような影響を及ぼすのか。米国の有力シンクタンクCSISパシフィック・フォーラム事務局長を務め、日米関係のスペシャリストである、ブラッド・グロサーマン氏に聞いた。
米国は微妙な境界線上を歩いている。

――安倍首相の靖国参拝に対する米国政府の対応は適切だと思いますか。

ええ、「失望した」という表現は適切だった。当初の表現からは薄められていると聞いている。それに駐日大使館と国務省の声明だけにとどまるのかどうか。「失望」というのは強い言葉だ。おそらく米国政府の率直な反応は、いらだち、怒り、欲求不満といったところだが、そういう表現は外交的にまずいと判断したのだろう。

靖国参拝は米国の東アジア戦略を混乱させることは確かだ。いろいろな点で米国の意に反している。米政府は米国の不快、幻滅をはっきり言う必要がある。同時に日米関係に亀裂が生じないように注意しなければならない。そういう事態はほかの政府に簡単に利用されてしまう。

具体的には、中国の台頭への適切な対応をめぐって、米国と日本との間で分裂が起こることが、戦略上、いちばん厄介な問題だ。中国は米政府と日本政府の間になんとかクサビを探ろうとし、また、クサビを作ろうとしている。さらに、そのクサビをのっぴきならぬものにしようとしている。

つまり、米国は微妙な境界線上を歩いていることになる。日米関係にはさらに予期せぬ副産物が生じるかもしれない。たとえば、オバマ大統領が4月に予定している訪日が短縮されることもありうる。

――靖国参拝が予想外だったので、米政府は慌てて反応したのか、それとも熟慮したものだったか。

安倍首相の靖国参拝は誰もが予期しなかったわけではない。いくつか兆候はあった。たとえば、昨年10月、彼の特別顧問の萩生田光一議員が参拝している。安倍首相が参拝に強い気持ちを抱いていることはオープンにされており、7年前の第1期安倍政権時に参拝しなかったことを痛恨の極みと言っていた。参拝は現実的な可能性として米政府は考えていたはずだ。そのタイミングがサプライズだったのは、自民党幹事長や連立与党の公明党党首が不意打ちを食らったことだろう。彼らに知らされたのは安倍首相が靖国に向かう車の中からだったという。

米政府にも事前には知らせなかったというのは、起こりうる可能性のある反動をいかに小さくするかという安倍首相一流の作戦だったのだろう。
「米国は黙認」という考えは妄想だ

――そのタイミングは沖縄問題および米軍海兵隊基地移転の交渉進展に合わせたものだと思いますか。

それが確かなことかどうかはわからないが、安倍首相が沖縄問題の進展を計算に入れていたという報告はあった。米政府は沖縄問題の進展を歓迎し、安倍首相の靖国参拝を大目に見てくれるのではないかと。

安倍首相はそういう計算をしたかもしれない。しかし、それは米政府の見解を正確に読んでいるとは言えない。靖国参拝は米国の意に明らかに反する。しかも、米国はそのことを追及すべきではないし、外交政策として“取引材料になるような”ことを追及していると見られるのもよくない。安倍首相が靖国参拝を考えていることについて、米国は「ウインクしてOKした」という寛大な態度をとった、という可能性はゼロだ。

米国人の選好がどういうものかということは、昨年10月にはっきりと示されている。ケリー国務長官とヘイグ国防長官が一緒に参拝したのは靖国神社ではなく、千鳥が淵墓苑(第2次世界大戦時の無名戦没者が祀られている)だった。そのことにこそ、米国人が戦没者に抱いている気持ちを正しい認識として示している。
安倍政権の靖国参拝は、米国から黙認されたものと考えるのは妄想であり、希望的観測にすぎない。

一方、安倍首相が沖縄・普天間処理などで政治的得点を上げ、米国としては日本側の多少の不満を飲まざるをえないという計算はありうるだろう。

――安倍首相の靖国参拝はなぜ米国の意に反しているのか。

それは日本との共同作業や、安全保障政策で日本を受け入れたり、日本の発言力を高めたりする努力を台なしにしてしまうからだ。現に、靖国参拝は日本にとって最も重要な同盟国の米国と、中国、韓国を怒らせてしまった。日本は中韓とは最終的に協力しなければならない。日中韓3国間のいかなる形の協力も、東アジアにおいては安定をもたらすものと米国は信じている。その安定を靖国参拝は問題含みにしてしまうのだ。

安倍首相の靖国参拝は米韓、米中の2国間関係にも混乱をもたらす。たとえば、ヘーゲル国防長官が韓国の朴槿恵首相と会談したとき、彼女は非常に熱心に日本についての苦情を述べていたという。訪中した米国高官は日本人の行動についての不平不満を何度も聞かされている。

これは日中韓3国間の協力関係を強化し、東アジアにおける日本の安全保障を強化するなど、米国が追求する戦略的目標を実現するのには障害になる。靖国参拝をめぐる論争は日本の安全保障上の役割を強化しようという、日本国内のコンセンサスを損ないかねない。

日本の国際社会における平和的な役割は、1945年以来、模範的であった。安倍首相やそのほかの首相の誰でもがその立派な記録の上に、安全保障上の役割を強化しようとするのであれば、米国の支持を獲得することができよう。しかし、安倍首相は日本の戦時レジームを何とか復権させようとしている。それは戦後の称賛すべき成果を基礎にした安全保障上の役割強化というビジョンをあいまいにさせるものであり、国内コンセンサスを揺るがすことになる。

――戦時レジームの“復権”とはどういう意味ですか。

安倍首相は東京裁判(極東国際軍事裁判)判決や憲法など、戦後秩序の見直しに狙いを定めている。米国はその裁判に多大の責任を負い、憲法にも特大の役割を担ってきた。そのため安倍首相の挑戦は日米関係を政治化させることになる。それは日米関係および安全保障同盟のあり方についての議論にも変換を迫るものだ。明らかに米国を安倍首相の議論とは反対の立場に立たせることになる。

安倍首相の立論は、その根底において、戦後レジームの合法性について問題を提起している。安倍首相や閣僚、さらに彼の政治的支持者たちは、日本における戦後レジームの妥当性をどの程度まで信じているのか。

日本の人々がそういう疑問を呈するのは結構だが、それは国論を統一するというよりも、分裂させる可能性があるということを理解しておくべきだ。その議論に米国が引き込まれる度合いにもよるが、日米関係は非常に混乱することになる。

中国は日本国内の分裂拡大を狙う

――日本の外交政策にとって実際的(現実的)な含意とは?

日本は1945年以前に起こったことについて、どんな些細なことでも言わずに、着実、かつ論理的な方法で日本の安全保障政策を前進させることだ。それは、日本にとって完全に実現可能だ。事実、日本は歴史に関して、いかなる種類の議論をしなくとも、集団的自衛権の行使や東アジアでの貢献、使命など、日本の安全保障上の役割拡大を容易に進めることができる。戦前の合法性についての議論を持ち出すと、日本国内でのコンセンサスを得るのがますます難しくなる。そういう議論は日本の役割を広げるためになると言う人がいるかもしれない。しかし、安倍首相の頭に描かれた文脈は必ずしもそうではない。

日本国内では、多くの市民社会派の人たちを含めて、安全保障という政策課題が拡大することに反対する人たちを刺激するだけだろう。最近の特定秘密保護法に対する反対の広がりはそのヒントになる。

外交政策の点では、韓国が日本と協力するのを非常に困難にしている。中国はすでに安倍政権とは協力しないという決定をしたようだ。これから中国は日本国内にそういう支持者を増やし、分裂を拡大させようとするだろう。

米国にとって、安倍首相のスタンスは東アジアにおける外交政策を混乱させる。米国は、韓国、中国との2国間交渉において安倍首相を立てるかのような印象を与えないように注意しなければならない。安倍首相の政策課題の問題部分を大目に見るような、あたかも「OKシグナル」を送るようなことは慎まなければならない。というのは、米国が選好する政策課題とは違うものを安倍首相は打ち出しているからだ。

こうした外交政策上の混乱は、結果的に、尖閣諸島や防空識別圏(ADIZ)など中国との紛争について、日米両国でどう取り組むかという戦術的な違いをいたずらに大げさにしたり、悪化させたりする危険性につながる。ごく些細な違いが拡大されることは、何の助けにもならない。


安倍首相のナショナリズムと日本の国益

――安倍首相の戦略は考え抜かれたものだと思いますか。たとえば、安倍首相は、米国の日本に対する安全保障の永続性に懸念があり、そのことを米国に警告しているとか。

靖国参拝と広範な戦略的課題との間に関連があるとは思えない。その必然性はない。日本は現在の安全保障上の課題について、その国際的なあり方や有効性に関して、なにも靖国参拝で明示的にしなくとも、課題の一つひとつを実現させていくことができる。それとは反対に、わざわざ靖国を参拝したことは、安倍政権が明確に説明してきた多くの戦略上の目標を、実現させるうえで障害物となりかねない。

安倍首相のジレンマは、自らのナショナリズムと日本の国益との間でどっちを選択するかということだ。

憲法9条の見直しや集団的自衛権の行使を含む、日本の安全保障のあり方をめぐる持続的な進展は、日本では米国との安全保障協力を強化するために考えられていると私は理解している。しかし、日本が最終的に独立した防衛力を持つ必要があり、そのためのステップを踏む必要があるというのは、信頼すべき日本の人たちから聞いたことがない。

私と話をした日本の人たちは、現在の安全保障の政策課題は米国との連携促進のために企画されており、靖国参拝をめぐる問題はそれを妨げるだけだと言う。

しかも、日本には軍事大国の野心を満たすだけの胃袋にもはや余裕はない。そのことは人口減少や財政制約とも相まって強力な抑制として働く。また、それは憲法とは何の関係もなく、多少ふらついているかもしれないが、いかなる軍事大国への野心をも打ちのめすものだ。

こうした抑制は、東アジアでの安全保障上の役割拡大を選好する日本にとっては有効に働くだろう。日本の軍国主義復活を懸念させるような事実上の根拠は何もない。しかし、安倍首相の靖国参拝がそうだったように、少しでも軍事大国の野心をのぞかせるような問題を引き起こすと、多くの日本人が志向しているような安全保障上の役割拡大とはならず、その障害となるだけである。

百田尚樹氏を米国は非常識だと批判

http://tsubouchitakahiko.com/?p=3857

 2014年2月8日の共同通信の報道によると、百田尚樹氏が都知事選応援演説で、アメリカによる東京大空襲や原爆投下を「大虐殺」とした上で、東京裁判を批判したことについて、同日、在日米大使館報道担当官は「非常識だ」と批判した。これは、アメリカ政府の公式の統一見解としている。
「安倍首相は戦後レジームからの脱却を断念?─対米自立派と対米追従派の分岐」(2014年1月31日)で、「日本が戦後レジームから脱却することをアメリカは許さない」というメッセージが、再び強く発信されようとしているのだろうかと書いたが、もはやそれは確実と見なければならない。
いまこそ、戦後レジームからの脱却を目指す者は、アメリカからの圧力をはねのけて対米自立に突き進む覚悟を決めるときではなかろうか。
 
 
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